親が遺言書を残さないで亡くなると、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をして遺産をどう分けるかを決めなければなりません。

しかし、話し合いで決めろと言われても、分け方の目安がないと決めるのは難しいでしょう。

そこで法律では、各相続人の遺産分割の割合を定めています。(民法900条)。

この割合が「法定相続分」です。

では、遺産分割協議は法定相続分どおりにしなければならないのでしょうか?

親が残した財産が積極財産(プラスの財産)と消極財産(マイナスの財産)で分けて考える必要があります。

 

① プラスの財産の分け方

親の遺産のうち、積極財産については、相続人全員の合意があれば、各相続人の法定相続分を無視した遺産の分け方をしてもかまいません。

遺産分けとは、亡くなった人の死後、相続人全員の共有状態になっている遺産を、どのように分けるか決める手続きです。

したがって、遺産の共有者である相続人全員が納得できる分け方であれば、どのような遺産分けをしてもかまわないのです。

たとえば、あなたに両親と妹が一人でいて父親が亡くなった場合、法定相続分は母親が二分の一、あなたと妹が各四分の一ずつとなります。

しかし、母親、あなた、妹の相続人全員が「父の遺産は母が全部引き継ごう」と決めれば、父親のすべての遺産を母親が引き継いでもいっこうにかまいません。

 

② マイナスの財産の分け方

消極財産は相続人全員の合意があれば、法定相続分を無視した遺産分けをして問題はありませでした。

では、亡くなった人の借金など、消極財産も相続人の話し合いで自由に負担し合ってかまわないのでしょうか。

消極財産の場合、積極財産と異なり、「利害関係人」として債権者がいるという特殊な事情があります。

通常の場合、各相続人の経済状況は、財力が豊富な人もいれば、カツカツの人もいるなど、それぞれ異なるものです。

もし、親が借金を残して亡くなった場合、財力の少ない子供が親の借金をすべて引き継いだとしたら、債権者は債権を回収できなくなるおそれがあります。

そこで、債権者に不利益が生じないように、消極財産は法定相続分に応じた分割をするのが原則です。

もし、相続人の間で話し合って、財力のある長男1人が親の借金を引き継ぐと決めるなど、法定相続分と異なる分割を行いたい場合は、個別に債権者と交渉をして同意を得ることが必要になります。

 

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