不動産は共有しないのが鉄則

家族で相談した結果、「うまく財産がわけられない」ということもあるでしょう。そんなときの対処法について紹介します。

「お兄ちゃんばっかりずるい」。 A家では、兄と妹が、どちらが実家の不動産を相続するかでもめています。A家は財産のほとんどが実家の土地建物です。その不動産を、兄が相続しようとしているのです。

このように財産のほとんどが自宅のような場合、財産の分け方について、全員の賛同が得られる解決というのは難しいものです。

しかし、「不動産を共有したらいいじゃないか」と思うのは、ちょっと待ってください。不動産は、「共有しない」のが鉄則です。

すぐに不動産を売却するという場合は、不動産を共有しても問題ありません。

しかし、もしその不動産を長期間にわたって保有するとなると、時の経過とともに共有は厄介な問題に変化します。なぜなら、共有不動産の処分などには、共有者全員の同意が必要だからです。

たとえば、兄が売却して現金化したいときには、妹の同意が必要です。兄と妹だけなら、まだ意見の折り合いをつけることもできるでしょう。

しかし、やがて兄と妹に相続が起こって、その子どもたちに持分が移っていくと、話し合いはおろか、共有者に連絡を取ることすら難しい状況になるかもしれません。こうなってからの処分となると、もうお手上げです。

では、Aさんのような場合、どのように分けたらいいのでしょうか?

Aさんのように、財産をそのままの形で分割しようとする分け方を「現物分割」といいます。この方法でうまく分けられないときは、次に紹介する「換価分割」「代償分割」という方法があります。

◆ 「換価分割」・・・・売却して現物に換えて分ける

財産をそのままの形ではうまく分けられない場合、あるいはその財産が必要ない場合には、財産を売却して現金に換えて分けるという方法があります。

これを換価分割と言います。

換価分割は、1円単位まできっちり分けられるようになる反面、相続税とは別に、財産を売った儲けに対して税金がかかる可能性があります。(相続財産を売却した場合の譲渡所得の特例の適用が受けられます)。

◆ 「代償分割」・・・・多く相続した人がお金や物で補填

代償分割とは、相続人の誰かがほかの相続人より多く遺産を相続した場合に、多く相続した相続人が、ほかの相続人に対してその差額分をお金や物で補填する方法です。

たとえば、相続人が2人の場合、1人が1億円の土地を相続する代わりに、残りの1人に5000万円の現金を支払うという方法です。

ただ、通常はこの5000万円の現金の用意が大変です。代償分割の問題点は財産を受け取った相続人が、差額を支払う資金をいかに準備するかということです。

うまく財産が分けられない場合、これらの方法の利用も検討してみてください。

A家の兄と妹の話に戻りましょう。もし、実家の不動産が兄にも妹にも必要ないものであれば、換価分割で売却をして分けるという方法もあるでしょう。

この不動産に兄が住んでいるのなら、売却できないので、兄は事前に代償分割のためには、たとえば被保険者を父親とした生命保険金で資金を準備するという方法なども考えられます。

ここまで、財産を分ける前に知っておきたいルールなどについて紹介してきました。これらをもとに、家族にとって一番納得が得られる財産の分け方は何かをみなで話し合ってみてください。

財産の分け方で、ほかにも考えなければいけないのは相続税がかかる場合です。

財産の分け方次第で、税額が変わってくることがあります。もちろん、税金が少くなくなる分け方が、家族にとってベストの分け方になるとは限りません。

しかし、分け方次第で税額が変わってくるのであれば、これも無視できない判断材料ではないでしょうか。

相続税は比較的高額になりやすい税金です。わが家に相続税がかかりそうかどうかを確かめてください。

その結果、相続税がかかりそうだとわかったら、節税の面からみた財産の分け方も検討してみましょう。

(渋谷区、新宿区を中心とした東京・周辺地区の相続のサポートは代々木2丁目の相続サポート室まで)